「熊を彫る人」 出版記念イベント 在本彌生&村岡俊也トークショー
2年程前のこと、仕事で訪れた北海道の阿寒湖で、木彫りの狼の写真を目にした。冷静で孤独な眼差し、細やかな毛並み、息の音が感じられる狼だった。この木彫りを自分の目で見てみたい、これをつくった人に会ってみたい、そう思った。
アイヌの木彫家、藤戸竹喜(ふじとたけき)さんを訪ねたのはそれから数カ月後のこと、私は狼の木彫りと対面し、作品を撮影させて頂きたいとお願いした。藤戸夫妻は初対面のどこの馬の骨とも分からない私の突拍子もない提案に耳を傾け、それを受け入れて下さった。茂子夫人は藤戸さんの傍らで、私の心の声を受けて優しい言葉をかけてくれる、茂子さんの存在はとても心強かった。
藤戸さんの熊や狼の作品を、阿寒湖の自然の中に解き放ち、その姿を撮影する。それが当初私が考えていたことだったが、写真を撮るのと同じくらい興味深かったのは、はじめてお会いした藤戸さんから聞いたお話のひとつひとつだった。藤戸さん個人の歴史、想い出なのだけれど、それが北海道という土地のこと、アイヌの歴史、自然と共に生きること、、、私たちが知っておきたいことにきれいに繋がっている。写真と言葉を合わせたい、そう思った。そこからいろんな人を巻き込んだ本作りが始まった。
丹念なインタビュー、自然や人物像の描写に長けた書き手である村岡俊也さんに、文章を書いてもらえないかと持ちかけた。私の提案に興味を抱いて、2度目の撮影から阿寒湖に同行してくれた。藤戸さんと語らい、熊の木彫りを抱えて雪道を歩き、背負って山に登る、全く頼もしい相棒だった。彼の文章があってこそ、この本が人々の気持ちに留まるものになったのは言うまでもない。
今回のトークイベントでは写真のことだけでなく、北海道のこと、アイヌ文化のこと、インタビューすること(インタビューはポートレートを撮ることに似ていると私は思っている)、取材のこぼれ話などを、村岡さんと、そして来て下さる皆さんと語り合いたい。
最新著「熊を彫る人」を携えて在本彌生さんが緊急来宇。ライター・村岡俊也さんとのダブルゲストでトークイベントを開催します。写真家とライター、2人の視点から本著について語られる今イベントは必見の価値ありです!ぜひお越しください!
「熊を彫る人」 出版記念イベント 在本彌生&村岡俊也トークショー
出演:在本彌生 村岡俊也
日時:2017年10月21日(土)18:00〜
場所:山本写真機店
会費:2,000円
山本写真機店
TEL:0836-31-5005
MAIL:contact@yamamotocamera.jp
在本彌生|ARIMOTO YAYOI
1970年東京生まれ。外資系航空会社で乗務員として勤務、乗客の勧めで写真と出会う。以降、時間と場所を問わず驚きと発見のビジョンを表現出来る写真の世界に夢中になる。美しく奇妙、クールで暖かい魅力的な被写体を求め、世界を飛び回り続けている。
2006年5月よりフリーランスフォトグラファーとして活動を開始。雑誌多数、カタログ、CDジャケット、TVCM、広告、展覧会にて活動中。写真集「MAGICALTRANSIT DAYS」(アートビートパブリッシャーズ刊)
http://www.yayoiarimoto.jp
村岡俊也|MURAOKA TOSHIYA
1978年鎌倉生まれ。中央大学法学部卒業後、フリーライターに。『BRUTUS』、『Casa BRUTUS』(マガジンハウス)、ANA機内誌『翼の王国』など、雑誌媒体を中心に活動。エッセイ集に『湘南随筆』(電子書籍)がある。